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ジョンQ 最後の決断 : John Q(2002/米)

I42.0 拡張型心筋症
【copy】
その時、彼は病院を占拠した。

要求はただ一つ、「息子の命を救うこと」

【staffs】監督 :ニック・カサヴェテス
出演 :デンゼル・ワシントン(John Q. Archibald)、ロバート・デュヴァル(Frank Grimes)、ジェームズ・ウッズ(Dr. Raymond Turner)、アン・ヘッチ(Rebecca Payne)、レイ・リオッタ(Monroe)
【prises】(not worth mentioning)
【my appraise】★★★(3 plus per5)
【prot】
 父親ジョンQを中心に親子三人平和に暮らす一家。しかし、ある日突然、息子マイクが倒れた。診察した心臓外科医と病院の院長は、心臓移植の選択を示すが、父親ジョンQの加入する保険では対象にならないという。会社側が最近HMOに切り替えたためらしい。莫大な手術費用を工面するため奔走するジョンQ。しかし、会社側への抗議が受け入れられる途が開けた矢先、病院側は退院を迫る。どうしようもない怒りをジョンQにぶつける妻。ジョンQは、遂に決断する。病院を乗っ取り、息子に手術を受けさせるのだ…。
 アメリカ医療制度の矛盾への強い怒りを投げかけた作品。
【impression】
 アメリカの社会や医療制度のことを頭だけで分かっていても、ピンとこないところが多く、作品そのものに感情移入しにくいかもしれない。
 主演予定のダスティン・ホフマンが降りてお蔵入りしていた映画(ダスティンは、「マスメディア」にスポットをあてたかったらしい)が、ニック・カサヴェテス監督のアメリカ医療制度への怒りによって蘇った。監督自身、娘が重い心臓病を持ち、死にかけている我が子が満足のいく医療を受けられないという問題をつきつけられた経験があるそうだ。
【medical view】
 親が子を思う気持ち、不平等な社会制度に対する怒り…どちらも十分伝わってきたが、私には、どうも違和感が残った。
 心臓移植がHMOの対象外であることへの怒りで始まっている(発見が遅れたことまでがHMOのせいになっているとは、アメリカ人はHMOに相当恨みがある様子(『恋愛小説家』でもやり玉にあがっていた))。一方、日本など皆保険とはいえ、心臓移植はすべからく保険適用ではない。高度先進医療の適用ではあるが、やれるのは国循と阪大のみだし、それ以前に、日本ではドナーが見つからず、お金を作ってアメリカで心臓移植を受けるしかない。ジョンQは、「気軽に」移植してもらおうと考えられる分、恵まれているといえるかもしれない。ただ、日本では、心臓移植の高度先進医療部分が保険外とはいえ、数百万円程度でおさまり、アメリカとは1桁安い。
 結局、お金があれば高い水準の医療が受けられるアメリカと、お金があろうが無かろうが、一定程度の医療しか受けられない日本、どっちが良いかと言うことになると思います。
 私は個人的に、日本の方が好きですし、日本の制度の方が、国民の不満が少ないということはいえると思います。ただ、日本の制度には問題があると言う意見も説得力があると思います。

 更に、この映画は子どもが元気になってハッピーエンドで終えているが、心臓移植の3年予後が7~80%で、10年生きれば良い方、しかも免疫抑制剤を一生飲む生活、本当に大変なのはこれから。本当に残念だし、かわいそうであるが、やはり、「神の与えた試練」と考えるしかないような気がする。だからといって、ジョンQのやったことや心情を否定する気持ちにもなれないのだけど…。
 監督は、俳優や監督の組合が加入する保険会社のランクでは、満足のいく医者すら選べなかったと怒りを隠さない。確かに、日本では、どんな人でも、好きな病院は選べる。しかし、日本では、技術の高い医師を選ぶ以前に、誰の技術が優れているかという情報そのものがない。日本でもデータを集め公開して選択と競争を働かせようという議論がある。まっとうな意見である。しかし、そうなると、当然、選べる人と選べない人が生じ、選べない人の「怒り」という新たな問題が太平洋を渡ってやってくる。
 …などど、映画そのものとは全く関係のないところで、考えさせられました。しかし、監督も医療制度の問題をメインに据えているし、実際、アメリカ国内で医療制度の論争材料になったらしいので、私の見方もあながち、間違ってはいないようだ。

【books】
 ノベライズが出ています。
【videos, DVDs 入手しやすさ】★★★★★
 ビデオ・DVDともレンタルがリリースされています。どのショップにもほぼ必ずあります。

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by harufe | 2005-06-19 08:00 | ICD I00-I99循環器系の疾患


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