震える舌(1980/Jpn)

A35 破傷風

【staffs】野村芳太郎監督
渡瀬恒彦(三好昭)、十朱幸代 (三好邦江)、若命真裕子 (三好昌子)、中野良子(能勢医師)、越村公一 (江田)、宇野重吉 (小児科教授)
【prises】
第23回ブルーリボン賞主演女優賞(十朱幸代)
第54回キネマ旬報賞主演男優賞(渡瀬恒彦)
第4回日本アカデミー賞優秀監督賞(野村芳太郎)、優秀男優賞(渡瀬恒彦)、優秀助演女優賞(中野良子)
【my appraise】★★★(per5)
【prot】
 千葉県葛西の新興団地に住む一家の一人娘昌子の風邪の症状が、なかなか治まらない。そればかりか、口を閉じたまま開けたがらず、奇妙な歩き方を始める。何度も医者にみせるが、そのたびに心配ないと帰される。しかし、つてをたどって受診した大学病院の詳しい検査で、破傷風であることが分かり、即入院となる。
 一切の刺激を避けるために光を閉ざした病室で、痙攣発作を繰り返し、幼い身体で苦しむ昌子。両親は看護に疲れ果てていく…。破傷風の恐怖を描いた映画。三木卓の同名小説を映画化。
【impression】
 幼少時に見ると、変なホラーより余程怖い。作った方も、怖がらせようと作った節がある。
 破傷風にかかった子どもの熱演ぶり(特にその苦しそうな声)も光るが、中野良子の女医ぶりが凛としていて、色っぽく、なかなかだ。渡瀬恒彦や十朱幸代は、やや深みに欠ける気がするが、それでも迫力ある演技だ。
 最後があっけないハッピーエンドになるのも、肩すかしではあるが、カタルシスも感じる。
邦画はこの頃は勢いがあった。
 聖路加病院を舞台にしており、旧病棟やガラスの点滴ビンや完全看護導入前の家族看護など、ノスタルジーに浸れます。

【medical view】
 破傷風は世界中どこでも発生している感染症。病原菌は土壌等に存在し、傷口(特に深い傷口)から感染します。嫌気性菌といい、酸素下では存在できないことから、地球の大気に酸素が少なく二酸化炭素で満ちていた太古の昔から存在していた菌ということになります(映画の説明だとなんだか分からないですよね)。
 この映画で一番疑問なのは、口が開かない、硬直感、けいれんなど、破傷風の典型的な症状が出ながら、病院で全く気づかれないところ。それどころか、症状が重くなって大学病院に担ぎ込まれても、なかなか気がつかれないではありませんか。原作が書かれたころは、破傷風の患者はそこら中にいただろうに、医学はこんなレベルだったのでしょうか?
 ちなみに、わが国では、1952 年に破傷風トキソイドワクチンが導入され、1968 年以降は、乳幼児期にジフテリア・百日咳・破傷風の三種混合ワクチン接種が実施されていますので、この映画のような悲劇は心配しなくてよくなっています。
 ところで、破傷風の抗体はワクチンを接種した後、10年くらいで消失するそうです。したがって、一定期間をおいて破傷風ワクチンを受けるべきということになります。日本では、乳幼児期で三種混合をやったあとは、小6にジフテリア・破傷風の二種混合をやるだけ。したがって、日本人の成人の多くは破傷風の抗体は消失しているということになります。
 今でも医療過疎国・地域では、外傷手当が適切でなく、医療行為で破傷風に感染する場合もあるうえに、免疫グロブリンによる治療が行われない場合が多いようです。したがって、そういった地域に渡航する場合は、予防接種が推奨されています。しかし、今での年間100名程度が破傷風に罹患し、その2~5割で死亡しているということですし、なにも海外に行かなくても、予防接種を受けておいた方が良いですよね。アメリカのTV映画「ER救急救命室」では、深い傷があると「いつ破傷風ワクチンを受けましたか」とよく聞いていることですし…。
 2005年5月、日本脳炎の予防接種が任意に切り替わりました。こういうことがあると、ちょっとだけ話題になるのが、予防接種の作用・副作用の問題と、その意義をだれがどのように判断するかということ。感染症が克服されればされるほど、予防接種のメリットは小さくなり、デメリット(副作用や費用)は相対的に大きくなります。しかし、それをどのような基準で判断するかということが、少なくとも日本では全く不明瞭なのです…。
【tilte, subtilte】
 原作のタイトルをそのまま映画のタイトルとしました。破傷風の症状を一言で「震える舌」と表したセンスがすばらしい。

【books】
 現在、原作の小説三木卓「震える舌」は絶版中です。

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by harufe | 2005-06-28 19:14 | ICD A00-B99感染症及び寄生虫症


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