ヴァージン・フライト The Theory of Flight (1998/UK)

G12.2 運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症)

【staffs】ポール・グリーングラス監督
ケネス・ブラナー(Richard)、ヘレナ・ボナム・カーター(Jane Hatchard)、ジェンマ・ジョーンズ(Anne)
【prises】
1999年ブリュッセル映画祭最優秀外国映画賞
【my appraise】★★★-(3 minus per5)
【prot】
 画家くずれのリチャードは、乗り越えられない自分を乗り越えるために、ビルの屋上から自作のグライダーで飛ぼとするが、あえなくダイブ。罪に問われた彼は、保護監察処分の代わりに120時間の社会奉仕活動を命じられる。
 彼が派遣された先は、MND(運動ニューロン疾患=ALS)で体の自由が奪われた車椅子のジェーン。身勝手で、リチャードに毒づく彼女だったが、自分を特別視しないリチャードに心を許すようになり、彼にヴァージンを捨てたいという望みを打ち明ける…。
【impression】
 実は、私は、劇場ではなく、しかも吹き替えVを見てしまったので、この映画を評価する資格はありません。
 ただ、エキセントリックな性格のリチャードを描くのが中途半端になっていて、結果的にジェーンの内面に十分触れることができない感じがします。リチャードのような性格を持ってこないと、この映画がお涙頂戴の陳腐なものになることは容易に想像できるのですが、それにしても、なんとなく不全感が残りました。
【staffs】
 若きALSの女性を演じるヘレナ・ボナム・カーターは、いかにもイギリス女優という印象を受けました。なんというか、演技に芯ががあって、シェークスピアとかやってそうな感じです。単に、日本でもヒットした『眺めの良い部屋』での演技(下写真)や、実際映画『ハムレット』に出演している(アメリカ映画だけど…)という先入観からきているのかもしれませんが。ただ、ティムバートンの『猿の惑星』にも出てたんですよね。確かに、サルメークは似合います。
  本作で共演しているケネス・ブラナーとは、私生活でもパートナーとのことです。むしろネガティブな影響が出ているような気もします。

【medical view】
 障碍を持った人を映画や本などで取り上げると、どうしても美しい感動的な話になりがちです。この映画は、そういった意味でかなり異色な映画といえましょう。
 障碍を持つことによって、純粋な心を持つことになる人もいるかもしれませんし、悟りを得る方もいらっしゃるかもしれません。しかし、大多数の方は、一般の人と変わらない欲望や欲求を持つのが当たり前なんであり、障碍をことさら美しく取り上げようとする側の方に問題がるように思います。私自身のことを考えると、今のところ若干の近視以外の障碍は持っていませんが、もともと薄汚れた心の持ち主であり、かりに生活がかなり制限されるような障碍を持ったとしたら、かえって相当ひねくれるのではないかと思います。
 この映画では、ジェーンが相当悪態をついていますが、決して、意固地になっているとか、ひねくれているというわけではありません。性に関する望みを口に出していても、歪んだ欲求ではなく、年相応の女の子が普通に考える素直で純粋な望みだと思います。それが映画になってしまうというのは、つまり、障碍を持つ人が普通の欲求を持つことが、特別なことに感じる人が多いということなんだろうなと思ったりします。三好春樹さんあたりが、この映画を感心して著書で取り上げたりしていますから、世の人のレベルも推して知るべしということなのでしょうか。

 「運動ニューロン疾患」という言葉は聞き慣れない病名かもしれませんが、代表的なものが「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」と聞くと、分かる方がやや増えるでしょうか。ALSは、平たく言えば、運動する神経が変性し筋がやせ細り、体を動かしたり、べったり、飲み込んだり、呼吸したりが、徐々に出来なくなります。多くは発症から数年のうちに、人工呼吸器の助けを借りないと生存できなくなる…という大変困難を伴う病気です(この部分は、『打撃王』を書くときに詳しく書く予定です)。
 ALSは、介護保険の特定疾患にもなっているからお分かりのように、通常は、中年期以降に発症します。ジェーンの発症は10代後半ですから、ALS以外の運動ニューロン疾患も考えるところですが、その進行からみて、やはりALSの可能性が高いように思われます。
 実は、ALSの多くは、遺伝とは無関係に発症しますが、一部に家族性のものがあり、その中のいくつかは若年発症するのです。若年発症する家族性ALSには、常染色体優性遺伝するもの(父母のどちらかがALSなら子どもが全てALSを発症する)と常染色体劣性遺伝するもの(父母がどちらもALSなら子どもが全てALSを発症する)とがあります。ジェーンのお父さんが映画に出てきませんが、おそらくは、映画に出てきていないお父さんが家族性ALSを発症して(つまり、常染色体劣性遺伝)、ジェーンと同じく若くしてお亡くなりになったという設定が考えられます。そうすると、ジェーンのお母さんとの出会いや、ジェーンの誕生にも秘話がありそうです。
 なお、ALSは経過と共に筋肉がやせてきますので、役作りのためには、もっとやせているべきかもしれません。
【tilte, subtilte】
 The Theory of Flightという原題を、ヴァージン・フライトとするのは、やっぱり、相当変ですよね?

【books】
ノベライズが出版されていましたが、絶版です。
【videos, DVDs入手しやすさ】★★
 レンタルはビデオのみ、置いてあるショップも余りありません。ただ、DVD、ビデオともに販売されていますので、興味のある方はそちらを。

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by harufe | 2005-07-04 09:59 | ICD G00-G99神経系の疾患


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