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カテゴリー(2)親が子を想うということ~13

 幼い子どもが不幸にして病を得た場合、ある意味、本人より悲しい想いをするのはその親かもしれません。また、親に先立つ子どもと子を想う親との関係は、多くの人の胸を打ち、また、多くの人が自分のこととして感情移入することのできるものではないでしょうか。

 仏教では(少なくとも日本の仏教では)、親に先立つことを、親不孝の罪としているようです。親不孝の罪をおかすと、閻魔様によって天国に行けず、賽の河原で永久に石を積んでいなくてはならないのだそうです。それを救うのが、お地蔵様ということのようです。ただ、普通は、自ら望んで親より先に死ぬよりも、病気や災害や戦争などで死ぬわけですし(あるいは、親がとてつもなく長生きかもしれませんが)、その罪を子どものせいにするのは理不尽な気がします。人工妊娠中絶した場合、胎児自身がその罪を負うという理屈で、水子地蔵に供養するのだという話を聞くと、どうも違うのではないかという気がしたりします。親より先立つことによって、親を悲しませてはならない、というところから来た「罪」なのだと思いますが、やや親の身勝手という領域に入っているような気がします。ただ、「先立つ不幸をお許し下さい」というメンタリティは、日本人的には、とてもよく分かるところではあります。

 幼い子どもが不治の病に冒された場合、どうしても、少しでも長く生きて欲しいという親の想い、もうこれ以上子どもの苦しむ姿を見たくないという親の想いなど、様々な親の気持ちが錯綜するのだと思います。ただ、それが、医療というパワーを得た場合、苦痛を伴った延命や逆に「安楽死」を可能にすることを考えると、ややこしい話になってくると思います(もちろん、積極的な「安楽死」はオランダでもない限り認められていませんが)。

 一方で、子どもを救う途があるのであれば、親はなんだってするというのが、これまた親心です。ただ、それが、凶悪な犯罪ともなれば、それで傷つく人もいるわけで、これまた困った話になります。

 といったように、重い病気に冒された子を持つ親の話は、映画のテーマに事欠きません。ここでも、そういった映画を取り上げてみました。


 ↓こうしてみると、母と息子を巡る話が一番多いですね。母親が中心になりがちなのは、母性愛や子育てにおける母親の役割、あるいは、離婚した場合に母親が子どもを引き取ることが多いということなのでしょうか。つまり、背景に、固定的な性役割意識が隠されているということですね。また、エディプス複合で代表されるような母・息子の関係を想定すると、「母と息子」という組み合わせが特に多いのも理解することができましょう。
 特殊な場合ですが、「マイフレンドメモリー」のところで書いた「伴性劣性遺伝の母(保因者)→息子(発症者)関係における母の「罪意識」」ということもあるでしょう。伴性劣性遺伝の難病は、副腎白質ジストロフィー以外にも、血友病、ドゥシャンヌ型筋ジストロフィー、一部の運動ニューロン疾患、一部のライソゾーム病、腎性尿崩症(伴性劣性遺伝の腎尿細管の水再吸収不全を原因)などあり、神様も随分残酷なことをするものです。伴性劣性遺伝でなくとも、21番トリソミーのような染色体異常や、垂直感染するものも、母親は、自分を責める気持ちが生まれるのでしょうか。最も、垂直感染するものは、事前にそのリスクを想定できますし、予防したりリスクを避けることができるので、同じ枠で考えるのべきではないですね。

 それにしても、父・娘という組み合わせがないのは妙な感じがします。

【主として母と息子】
●トーマス・フラッド「ママ、泣かないで」(1983) 白血病
●ペニー・マーシャル「レナードの朝」(1990)脳炎後パーキンソン症候群
●ピーター・ホートン「マイフレンドフォーエバー」(1995)後天性免疫不全症候群
●ジム・エイブラハムズ「誤診」(1997)てんかん
●ピーター・チェルソム「マイフレンドメモリー」(1998)
●チャールズ・マクドガル「HEART」(1999)
●レア・プール「天国の青い蝶」(2004)脳腫瘍

【主として母と娘】
●ゲイリー・マーシャル「カーラの結婚宣言」(1999)知的障碍
●デビット・フィンチャー「パニック・ルーム」(2002)1型糖尿病

【主として父と息子】
●バーベット・シュローダー「絶体×絶命」 (1998)急性白血病
●ニック・カサヴェテス「ジョンQ/最後の決断」(2002)

【両親と子ども】
●野村芳太郎「震える舌」(1980)破傷風
●ロバート・マーコウィッツ「ニコラスの贈りもの」(1998)交通事故死


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by harufe | 2005-07-05 11:22 | カテゴライズ


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