オータムインニューヨーク (2000/US)

C38.3 縦隔神経芽腫

【copy】
シャーロット、22歳。彼女に残されたのはわずか一年という命。

「恋をしたい。今すぐ」
「なぜ?」

【staffs】監督 : Joan Chen 陳冲 ジョアン・チェン
リチャード・ギア(Will)、ウィノナ・ライダー(Charlotte Fielding)、エレーン・ストリッチ(Dolly)、アンソニー・ラパグリア(John)、ジル・ヘネシー(Lynn)、メアリー・ベス・ハート(Dr.Sibley)、シェリー・ストリングフィールド(サラ)、ヴェラ・ファーミガ(リサ)
【prises】第21回ラジー賞(ゴールデン・ラズベリー賞)ワースト・スクリーン・カップル賞ノミネート
【my appraise】★★★-(3 minus per5)
【prot】
ニューヨークのセントラルパークで高級レストランを経営するウィルは、ハンサムでリッチだが、独身で女癖の悪い48歳の男性。彼は自分の経営するレストランで22歳の誕生日を祝うシャーロットと出会う。自然に結ばれる二人だったが、シャーロットはこの年齢では珍しい神経芽腫で余命1年と告げられていた…。
【impression】
 ラジー賞にノミネートされているように、悪評の高い恋愛映画。ニューヨークの秋からクリスマスの美しさに説得力があるのに、二人の愛に説得力が弱い。
 個人的には酷評するほどではないと思うし、こういうこともあると思うのだが、リチャードギアとウィノナライダーの悪い部分が見えてくるような映画ではある。
【staffs】
 線が細く中性的で、それでいて、女性的な魅力に満ちたウイノナライダーは、余命僅かの女性を演ずるのには適しているように思います。万引き事件の判決後、2003年にはマークジェイコブスのモデルのオファー…というニュースがありましたが、それ以降、全く姿を消してしまいましたね。もう33歳なんですねえ。
 「ER 緊急救命室」のスーザン・ルイス(シェリー・ストリングフィールド)が、ちょい役で出ています。

【medical view】
 神経芽(細胞)腫は、悪性腫瘍(がん)の1つで、神経系の1つ交感神経におきるがんです。交感神経に起こるがんですので、体中どこからでも発生し得ますが、副腎から発生する場合が多いようです。小児のがんで、白血病を除くと最も発生が多いものです。1歳以下特に生後6か月以下で発見すると、予後が良いのですが、2歳を過ぎると死亡率の高いがんです(おそらくは、一定年齢後の神経芽腫は、生まれて間もない神経芽腫と種類が違うものだろうとされています)。多くは、骨髄に転移して痛みや貧血で気づかれることが多いようです。
 1歳未満の神経芽腫は予後が良くマススクリーニングの方法が開発されていたことから、日本では1984年から生後6~7か月の全乳児を対象に検診が行われてきました。ところが、1歳未満の神経芽腫は放置しておいて自然治癒する例も少なくなく、早期に発見して治療に対する苦痛もあり、そもそも神経芽細胞腫検診が死亡率を減少させているかどうかもはっきりしていませんでした。そこで、2003年に国の研究会で、有効性が確認されるまで休止すべきという報告が出され、2004年に廃止されました。
 どうもわが国では、健康診断や検診が好きな国民性があり、「良さそう」というだけで、どんどんやられる傾向にありましたが、それが見直される機運にあります。それはそれで良いことなのですが、きちんとした評価体制や仕組みがないところで、思いついたように、国が厚生科学研究費で研究班を立ち上げて検討するというのでは、一抹の不安があります。お金はかかりますが、常設の評価機関や、アメリカのように議会併設の技術評価機関などが必要なのではないでしょうか。

 さて、話は戻ります、上述の通り、神経芽腫は子どものがんで、シャーロットのように、20歳前後で、しかも縦隔(胸腔内で左右肺の間)に発症するのはとても珍しいといえます。その上、末期とはいえ、元気にセックスするなど、残された期間を十分満喫しており、こういうこともあるものなのでしょうか…という感じではあります。
 ところで、この映画のポイントは、シャーロットが余命1年と告げられ、外科的手術の方法はあるがそれは主治医が強く進めておらず、シャーロット自身も手術拒否の書類にサインしていることです(延命(挿管)拒否でもないのに、手術拒否というサインがあるのは、骨髄転移で貧血を起こし意識を失い、その場で緊急手術をすることが考えられるからでしょうか?)。しかし、本人の意志にもかかわらず、知り合ったばかりの恋人が、手を尽くそうとします。ただ、大変難しい手術らしく、どの医師にも断られ続け、ようやくクリーブランドからわざわざ天才的な外科医Dr. Tom Grandyを探し出すのです(実際に探し出したのは、別居していた娘ですが)。
 「安らかに天寿を全うする」か、「チャレンジして助かる可能性にかけるかわりに、苦痛と命を縮めるリスクをとる」かを、選ぶということは難しいことです。なにしろ、助かる可能性がどの程度で、助かるといっても何がどのくらい助かるのか、苦痛がどのくらいか、命がどの程度縮まる確率なのか…これが分かったとしても難しいのに、多くは分からない、せいぜい確率的にこの程度という子どもだましの数字があるくらい(いくら、EBM、EBMと言っても、同じ状態であらゆる面から同じ属性の患者のエビデンスなど普通は存在しないのですし、サラのような珍しい症例では特にそうです)。
 これを簡単に「チャレンジしよう」というのは、やはり、恋人のエゴなんですけど、エゴが言えるくらい愛しているという言い方があるかもしれません。

 ちなみに、日本だと、こうやって別の病院の名医を探し出したり、来てもらったりすると、ろくなことはないですが(これまで大学病院が教育を担ってきたため、大学病院ごとに系列や人間関係が出来上がっているため、大なり小なり面倒がられたり、シコリが残る)、アメリカではこういったことは決して珍しくないと思いますし、誰も気分を害しないはずです。
 もう1つついでに「ちなみに」ですが、Dr. Tom Grandyは、ハーバード卒後、コロンビア医科大を卒業し、Cleveland Health Center 勤務という設定なっています。Cleveland Health Centerとは、おそらく、クリーブランドクリニックの心臓専門センター(Heart Center)と思われます。クリーブランドクリニックは、世界的に超一流の病院として知られ、日本でも有名だと思いますが、それを裏付けるように、U.S. News & World Report (全米で最も信頼される医療機関のランキングを毎年発表している)の2005年で総合4位(1位はジョンズホプキンス病院)で、なかでも、HEART AND HEART SURGERY部門では1位の病院です。ウィルが「オハイオか!」みたいなことを言っていますが、恋人のことを真剣に想って調べていれば、クリーブランドクリニックが最高の病院だってことが分かっているはず。クリーブランドクリニックの心臓・心臓外科部門は、専門医師による調査でも70.1%も支持されていますし、ニューヨーク近郊だと、5位のマサチューセッツ総合病院、6位ブリガム&ウィメンズ病院(いずれも、ハーバード大系でボストンにある)、7位ニューヨーク・プレスビタリアン大学病院とあるけど、いずれも支持率が、24.1%、21.1%、20.7%と段違いなんだから…。しかも、遠いといっても、同じ東部で、直線距離で500km。東京-札幌より近い。

 さて、話を戻しますが、一番不思議なのは、Dr. Tom Grandyが、「次に倒れて意識が回復しないようだったら、私を呼ぶように」という指示を出すことです。直線距離でも500kmを超えるだろうに、いくらすぐヘリコプターでかけつけても、連絡もらって手術まで2時間はかかる、そんなもので良いのかしら?と考えてしまいます。動かせないような状態ではないのだから、すぐにでもクリーブランドにシャーロットを運べば?と思います。
 ここは穿った見方をすると、伸るか反るかの大手術、成功する確率も低く、成功しない限り命を縮めることは間違いない。…と考えて、最後の最後に手術をもってくる(本当にそんなことがありうるのか、全く分かりませんが、なにしろ、あのクリーブランドクリニックですから)。
 だとすれば、問題ないのです。選択肢は、「意識不明のまま安らかに死ぬ」か、「意識不明になったあと最後のチャレンジをする」か、どちらかだからです。

【videos, DVDs入手しやすさ】★★★★
レンタルDVDが出ていて、置いてあるショップも多いと思います。


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by harufe | 2005-07-12 12:36 | ICD C00-D48新生物


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