ティアーズ・オブ・ザ・サン Tears Of The Sun(2003 / US)

国際医療救助活動(国境なき医師団)

【copy】
“命令違反”
それでも私は、あなたたちを守りたかった――。

【staffs】監督:アントワーン・フークア
出演: ブルース・ウィリス(ウォーターズ大尉)、モニカ・ベルッチ(リーナ・ケンドリックス)
【prises】(not worth mentioning)
【my appraise】★★★(3 per5)
【prot】
 1966年ナイジェリアでは、軍事クーデターによりイスラム教系ハウサ族が政権を握り、キリスト教系イボ族に対する圧政と虐殺が始まる。
 米軍特殊部隊のウォーターズ大尉は、そのナイジェリアからアメリカ国籍を持つイタリア系女医を救出する指令を受ける。彼女は、イボ族の難民と行動を共にし、治療を続けており、自分だけが救出されること拒む。しかし、それは米軍の指令では受け入れられないものだった…。
【impression】
 当初「ダイ・ハード4」として書かれた脚本を、設定を変えて映画化したのがこの作品なのだそうです。映画では、「ダイ・ハード」の続編とは、とても感じられなかったです。

 この映画製作の頃、同時多発テロがあり、イスラム=悪VSキリスト教=善の対立で、この映画を作られたのは想像に難くありません。アフリカ屈指の産油国ナイジェリアの現体制に連なる軍政府を、あそこまで「悪」にかくものかなあ、と思いました(しかも、歴史的には、イボ族のジェノサイドは疑問視されつつあるというのに)。
 こういう政治的背景も含め、ハリウッドらしい戦争アクション映画です。

 ちなみに、東部イボ族独立運動であるナイジェリア内戦(日本ではビアフラ内戦と呼ばれています)は、67~70年の期間200万人者死者を出しました。その数は、大国の介入が無かったにもかかわらず、ベトナム戦争、朝鮮戦争並みです。これだけの大規模な死者を出したのは、この映画で描かれているようなイボ族への集団殺害ジェノサイドによるものというよりも、「ビアフラの理念が認められさえすれば、ビアフラ人が1人残らず殺されてもかまわない」と宣言した分離独立・徹底抗戦主義のイボ族・オジュク大佐の役割が少なくありません。
 現在は、ビアフラ共和国は地上から姿を消し、この映画で描かれているナイジェリアの軍事政権がそのまま大統領選を経て民政化しています。部族・宗教間対立はくすぶっているようです。

 武器のこととかは詳しくないのですが、1960年代という時代考証は、これで大丈夫なのだろうかと感じました。
【staffs】
 「イタリアの宝石」モニカ・ベルッチは、この映画でも美しさが光っています。しかし、美しさが光りすぎて、内戦の前線で救援活動に専心する医師役としては、今ひとつな気がします。「マレーナ」のような汚れ役でもない、「マトリックス」のような無機的な美人役でもない演技は、今ひとつなのでしょうか。
この映画は、「マトリックスリローデッド」「マトリックスレボリューションズ」のほぼ同時期に撮られた映画です。

【medical view】
 ノーベル平和賞を受賞した「国境なき医師団」を知らない人はいないと思いますし、この映画を見て、それを思い出した人も多いかもしれません。実は、「国境なき医師団」は、この映画で扱われていたビアフラ内戦(ナイジェリア内戦)を契機に、フランス人医師ベルナール・クシュネールらを中心に結成されました。
 ビアフラ内戦までは、戦争時の人道支援(非戦闘員に対する医療)を担ってきたのは、1864年にアンリ・デュナンによって設立された赤十字でした。しかし、赤十字は、ナチスの強制収容所を訪問しそれを非難せず、しかも赤十字が訪問したことをナチスが宣伝に用いたことから、戦後、大きな批判に立たされました。赤十字国際委員会は、第三者(歴史学者ジャン=クロードファヴェーズ)による調査を受け入れ完璧な総括を受け入れています。しかし、人道援助を行うために、権力に対して口を閉ざさざるを得ないという面が、赤十字の限界として多くの人々に認識されていたのでした。このことが、本映画の背景であるビアフラ内戦において、再度クローズアップされることになりました。赤十字国際委員会は、ナイジェリア連邦政府との合意に重きを置き、国際社会への告発への行動をとらなかったのです。特に、イボ族に対する集団殺害(ジェノサイド)を目撃したフランスの赤十字の医師達は、この「沈黙」を赤十字の限界としてとらえたのでした。
 そうして、赤十字の過ちを繰り返さない、すなわち、緊急医療を行いつつ、本格的援助に向けて、国際世論に対する「耳」にも「目」にもなろうとして設立されたのが、国境なき医師団であったということです。
 国境なき医師団は、その後、様々な矛盾に向き合い、分裂を繰り返しつつも、確実に国際社会における地位を確立してきたといってよいでしょう。

 イラクにおける邦人人質事件以来、この映画を見て、こうした援助に対して、「偽善」だとか「自己満足」だとか「迷惑」だとか、感じる人が増えているように思います。そうした方は、【books】で照会した「人道援助、そのジレンマ」を一読下さい。自分の認識や思考の浅さに気づかされるとともに、フランス人らしい、実践と抽象思考のたゆみなき葛藤に敬意を払わざるをえないと思います。特に、センティメンタリズムと自己賞賛を乗り越えようとすることへの厳しさには敬服します。

 「人道援助、そのジレンマ」の中で、ロニー・ブローマンは、「国境なき医師団」設立となった、ビアフラ内戦におけるフランス赤十字の医師たちは、実は、オジュク大佐率いる分離独立派に利用されていたのではないかと提起しています。こういった、自己の歴史を総括・否定しているところは、なかなか勇気のいるところだと思います。

 国境なき医師団、その後については、『すべては愛のために』について述べたいと思います。

 それにしても、看護などのコメディカルスタッフも参加するのに、「医師団」っていう名称を不適切に感じるのは私だけでしょうか(原語も「医師団」のようですし)

【tilte, subtilte】

【books】
ノベライズが出ています。
 国境なき医師団の実践と理念については、ロニー・ブローマン『人道援助、そのジレンマ』が白眉の書です。
【videos, DVDs入手しやすさ】★★★★★
 最近の映画で、人気俳優の共演ですから、どのショップにもレンタルDVDが置いてあります。

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by harufe | 2005-08-13 22:11 | 基礎医学と医療制度


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