Ray/レイ(2004/US)

H54.0 盲<失明>,両眼
H40.9 緑内障,詳細不明


【copy】
レイ・チャールズ――音楽、恋、そして人生。彼は、生きること全てにおいて<天才>だった。

【staffs】テイラー・ハックフォード監督
ジェイミー・フォックス(Ray Charles)、ケリー・ワシントン(Della Bea Robinson)、レジーナ・キング(Margie Hendricks)、アーンジャニュー・エリス(Mary Ann Fisher)シャロン・ウォレン(Aretha Robinson)、クリフトン・パウエル(Jeff Brown)、ハリー・レニック(Joe Adams)、リチャード・シフ(Jerry Wexler)、カーティス・アームストロング(Ahmet Ertegun)
【prises】
第77回アカデミー賞作品賞ノミネート、主演男優賞(ジェイミーフォックス)受賞、監督賞(テイラー・ハックフォード)ノミネート、音響賞受賞、衣装デザイン賞ノミネート、編集賞ノミネート
【my appraise】★★★★-(4 minus per5)
【prot】
 黒人の貧困家庭に生まれたレイは、幼少期の自分の弟を事故で亡くしたトラウマと、緑内障による失明をかかえながら、得意の音楽でスターダムにのし上がっていく。しかし、彼は、成功と共に女と薬にのめり込み、破滅の途を歩んでいく…。
【impression】
 本物以上に本物臭いジェイミー・フォックスの演技と、本物以上の音楽の迫力に気圧される。ケリー・ワシントンをはじめ、レジーナ・キング、アーンジャニュー・エリスといったレイの恋人役や、母アレサ役のシャロン・ウォレンといった黒人女性の魅力が光る。

【medical view】
 レイが失明した原因は緑内障ということですが、外傷や炎症によるものなのかどうかは、原作を読まないと分からないですね(読んでいない)。ただ、レイがもっと恵まれた生活環境にあったとすれば、治療の可能性があり、完全に失明しなくてすんだ可能性も高いと思われます。映画を見る限り、レイの音楽には、盲目との闘いという要素が大きいように感じたのですが、仮に、レイが失明しなかったとすれば、レイの音楽も存在していなかったという可能性があるのでしょうか。やや、複雑な心境になります。
 一般に知られる緑内障は、中高年になると発症しやすく、結構、頻度が高い病気ということです。眼圧が高くなり、視野狭窄が起こるのが特徴で、眼圧を弱めるなどの治療で可能な病気です。白内障と違って、一度失われた視覚は元には戻らないので、早期発見早期治療が重要。特に白内障の高齢者の場合、ぎりぎりまで手術をしないので、緑内障が見落とされる場合があるようで、注意が必要ですね。
わが国の失明の原因の第2位ということで、頻度も高いですし、検査もそう大変ではないですから、職場や地域の検診に取り入れても良いように思います。また、眼科がもうかるだけという気がしますが、失明者を増やすよりは社会的コストは低いことは十分想定できます。まあ、社会任せにするのではなくて、35歳を過ぎれば自分で検診に行けば良いのでしょうけれど。

【books】
【videos, DVDs入手しやすさ】★★★★★
どのショップでもまちがいなくレンタルDVDが置いてあります。

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# by harufe | 2005-06-29 12:27 | ICD H00-H59眼および付属疾患

震える舌(1980/Jpn)

A35 破傷風

【staffs】野村芳太郎監督
渡瀬恒彦(三好昭)、十朱幸代 (三好邦江)、若命真裕子 (三好昌子)、中野良子(能勢医師)、越村公一 (江田)、宇野重吉 (小児科教授)
【prises】
第23回ブルーリボン賞主演女優賞(十朱幸代)
第54回キネマ旬報賞主演男優賞(渡瀬恒彦)
第4回日本アカデミー賞優秀監督賞(野村芳太郎)、優秀男優賞(渡瀬恒彦)、優秀助演女優賞(中野良子)
【my appraise】★★★(per5)
【prot】
 千葉県葛西の新興団地に住む一家の一人娘昌子の風邪の症状が、なかなか治まらない。そればかりか、口を閉じたまま開けたがらず、奇妙な歩き方を始める。何度も医者にみせるが、そのたびに心配ないと帰される。しかし、つてをたどって受診した大学病院の詳しい検査で、破傷風であることが分かり、即入院となる。
 一切の刺激を避けるために光を閉ざした病室で、痙攣発作を繰り返し、幼い身体で苦しむ昌子。両親は看護に疲れ果てていく…。破傷風の恐怖を描いた映画。三木卓の同名小説を映画化。
【impression】
 幼少時に見ると、変なホラーより余程怖い。作った方も、怖がらせようと作った節がある。
 破傷風にかかった子どもの熱演ぶり(特にその苦しそうな声)も光るが、中野良子の女医ぶりが凛としていて、色っぽく、なかなかだ。渡瀬恒彦や十朱幸代は、やや深みに欠ける気がするが、それでも迫力ある演技だ。
 最後があっけないハッピーエンドになるのも、肩すかしではあるが、カタルシスも感じる。
邦画はこの頃は勢いがあった。
 聖路加病院を舞台にしており、旧病棟やガラスの点滴ビンや完全看護導入前の家族看護など、ノスタルジーに浸れます。

【medical view】
 破傷風は世界中どこでも発生している感染症。病原菌は土壌等に存在し、傷口(特に深い傷口)から感染します。嫌気性菌といい、酸素下では存在できないことから、地球の大気に酸素が少なく二酸化炭素で満ちていた太古の昔から存在していた菌ということになります(映画の説明だとなんだか分からないですよね)。
 この映画で一番疑問なのは、口が開かない、硬直感、けいれんなど、破傷風の典型的な症状が出ながら、病院で全く気づかれないところ。それどころか、症状が重くなって大学病院に担ぎ込まれても、なかなか気がつかれないではありませんか。原作が書かれたころは、破傷風の患者はそこら中にいただろうに、医学はこんなレベルだったのでしょうか?
 ちなみに、わが国では、1952 年に破傷風トキソイドワクチンが導入され、1968 年以降は、乳幼児期にジフテリア・百日咳・破傷風の三種混合ワクチン接種が実施されていますので、この映画のような悲劇は心配しなくてよくなっています。
 ところで、破傷風の抗体はワクチンを接種した後、10年くらいで消失するそうです。したがって、一定期間をおいて破傷風ワクチンを受けるべきということになります。日本では、乳幼児期で三種混合をやったあとは、小6にジフテリア・破傷風の二種混合をやるだけ。したがって、日本人の成人の多くは破傷風の抗体は消失しているということになります。
 今でも医療過疎国・地域では、外傷手当が適切でなく、医療行為で破傷風に感染する場合もあるうえに、免疫グロブリンによる治療が行われない場合が多いようです。したがって、そういった地域に渡航する場合は、予防接種が推奨されています。しかし、今での年間100名程度が破傷風に罹患し、その2~5割で死亡しているということですし、なにも海外に行かなくても、予防接種を受けておいた方が良いですよね。アメリカのTV映画「ER救急救命室」では、深い傷があると「いつ破傷風ワクチンを受けましたか」とよく聞いていることですし…。
 2005年5月、日本脳炎の予防接種が任意に切り替わりました。こういうことがあると、ちょっとだけ話題になるのが、予防接種の作用・副作用の問題と、その意義をだれがどのように判断するかということ。感染症が克服されればされるほど、予防接種のメリットは小さくなり、デメリット(副作用や費用)は相対的に大きくなります。しかし、それをどのような基準で判断するかということが、少なくとも日本では全く不明瞭なのです…。
【tilte, subtilte】
 原作のタイトルをそのまま映画のタイトルとしました。破傷風の症状を一言で「震える舌」と表したセンスがすばらしい。

【books】
 現在、原作の小説三木卓「震える舌」は絶版中です。

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# by harufe | 2005-06-28 19:14 | ICD A00-B99感染症及び寄生虫症

カテゴリー(1)天才と病~14作品

 「クリエイティブ・イルネス」という言葉は、ご存知の方も多いでしょう。
 精神医学者HFエランベルジュ(一般には「エレンベルガー」で知られていますが、フランス語圏の人なので、相互主義に乗っ取れば「エランベルジュ」の方が正しい)が言い始めたことのようですが(河合隼雄が言い始めたことでは、決してない)、芸術や天才の創造性が狂気や精神的な病によってインスパイヤーされる場合のことを言うのだそうです。

 専門家に指摘されるまでもなく、カフカやシーレやフィッツジェラルドの作品は、どこか狂気と隣り合わせであるような気がします。
 ドストエフスキーの作品は、てんかんの大発作で得られる恍惚感と無縁ではないような気がしますし、芥川の傑作は病勢が増した時に集中しているのだそうです。ゲーテについては、そううつ病、「もっと光を!」と季節変動性気分障害の関係とその作品の関係を指摘する人もいるそうです。イタリア紀行には、そういう見方を彷彿とさせます。また、進行麻痺は、ニーチェに天才的思索をもたらしたとも言われており、そうすると、シューベルトやベートーベンもボードレールもショーペンハウエルも…と当時の天才の多くが、梅毒スピロヘーターに霊感を得たなんていう解釈も可能かもしれません。
 このような領域の研究は、病跡学pathographyとして、確立されており、なかなか興味深い研究分野です。日本だと漱石の研究が盛んなようですね(漱石は統合失調症あるいは気分障害近縁の疾病で、現在の松沢病院で治療も受けていたそうです)。

 こういった病と創造性の関係は、なにも、こころの病だけではないような気がします。

 例えば、漱石の作品も修善寺の大患(胃潰瘍による大量吐血)で臨死体験をしたことが、その後の作品に大きな影響を与えています。
 ベートーベンも耳が聞こえなくなったことが悲劇のように言われますが、かれの傑作の大部分は、難聴が相当進展して以降であり、その意味では、彼の作品は難聴という試練と困難がなかったら生まれなかったかもしれません。
 
 特に、結核と芸術の関係は興味深いものがあり、キーツ、ショパン、宮沢賢治、正岡子規、堀辰雄は言うに及ばす、結核という病気そのものがロマンチックで、芸術そのものと密接につながると考えられていた時代があります(詳しくは、福田眞人氏の名著「結核という文化」をお読み下さい。)

 ただ、もちろん、病が、創作活動に負の面の影響をもたらすことも少なくないでしょう。
 例えば、漱石を苦しめた胃潰瘍は、彼に転機を与えたかもしれませんが、結局は胃潰瘍で死ぬわけですから。
 シューマンは自殺未遂後、晩年を精神病院ですごしますが、それ以前から、創作活動は変調をきたしていました。彼の病気についても、色々と諸説紛々としているようですが、梅毒というのが定説のようです。進行麻痺で霊感を受けたかもしれない天才達は、梅毒により早逝したというわけです。
 シューマンは8歳の時からピアニストに目覚め、20歳の時にクララの父親のところに師事します。しかし、21歳に指に障碍が現れ、ピアニストを諦め、文筆業・作曲家に転身することになりました。ただ、当時は、ピアニストが最も脚光を浴びる職業で、モーツァルトやベートーヴェンですら、ピアニストとして成功した後に作曲家への途が開けているのです。
 そのことがあったのか、クララと恋に落ちてしばらくは、自分の鬱屈をぶつかるかのようにピアノ小品ばかりを書いています。そのお陰かどうか、クララはピアニストとして成功しますし、我々は、素敵なシューマンの小品を聞けるというわけです(なぜか、結婚後は、全く、ピアノ小品はかいていませんが、「釣った魚にはえさをやれない」というレベルの話ではないようです)。
 ところで、シューマンの指の障碍についても、その原因が梅毒あったという有力な説の1つがあります。そうなると、作曲家として成功したのは、梅毒のよって指が動かなくなったおかげという見方もできなくはないですね。
 
 話をもとに戻して、病が天才の全てを奪う、という面で最も分かりやすいのは、ルーゲーリックのような場合です。彼は、アメリカでは「ルーゲーリック病」で知られるALS(筋萎縮性側索硬化症)に選手生命を奪われ、引退2年後死亡してしまいました。彼の場合は、病は、全く負の影響しかありえません。

 1人の天才や偉人の身体的な病や死因の分析・検討は、医学専門誌、学会誌(New Eng J Med, Lancet や更に個別診療科の雑誌)に散見されるところです。早川智氏によれば、この分野では、Trebor-Roperによる"The World Through Blunted Sight."が古典的名著ということです。日本語ですと、早川氏自身による『ミューズの病跡学1音楽家編』『ミューズの病跡学2美術家編』が大変お薦めです。
 ただ、こういった内容は専門的で、一般の人には難しいし、そもそもなかなか目に届きにくい情報です。私の知る限り、リチャード・ゴードン(特に「歴史は患者でつくられる An alarming history of famous and difficult patients」)が、一般向けに書かれた著書の嚆矢ではないでしょうか。翻訳者の小林武夫氏が「歴史は患者でつくられる」の後書きに、「ゴードン博士の論旨の進め方は病跡学(pathography)という手法に近い。」と書いておられますが、私も同じ感想を持ちました。日本では、神経内科(Neurology)の分野に限れば、小長谷正明氏の「ヒトラーの震え 毛沢東の摺り足」が名著(しかも平易)であります。なお、前述の早川氏の『ミューズの病跡学』も、分かりやすく面白く書かれていますが、多少の医学知識が必要です。
 いずれにせよ、「病跡」や「病跡学」という言葉が精神科に限定されて語られることが多いのですが、それだと、天才と彼が生きた時代を、あまりにも矮小する嫌いがあるようにも感じます(別に精神科が矮小だといっているわけではないですが)。

 ということで、映画に見る「天才と病」というカテゴリーで、いくつかの映画をまとめてみました。詳しい病跡の分析を行うのは私の力の及ぶ範囲ではありませんし、私の意図とも異なります。これまで知られている病跡をもとに映画をみることによって、違う魅力も発見してもらおうという趣旨です。是非、気軽に読んでください。
(夏目漱石の生涯を素材にした映画が作成中ということで、楽しみです)

 
(病の苦しみが天才を目覚めさせる)
●『マイレフトフット(1989)』~クリスティ・ブラウン:脳性麻痺
『不滅の恋 ベートーヴェン(1994) 』~(楽聖)ルードウィッヒ・フォン・ベートーヴェン:耳硬化症&鉛中毒の疑い
●『葡萄酒色の人生 ロートレック(1998)』~アンリ・ド・トゥールーズ:濃化異骨症の疑い
●『フリーダー(2002)』~フリーダ・カーロ:小児麻痺、交通外傷
『ビヨンド the シー 夢見るように歌えば (2004)』~リウマチ熱
『Ray/レイ(2004)』~(盲目のジャズミュージシャン)レイ・チャールズ:緑内障

(病と天才の気まぐれな関係)
●『ゴッホ(1990)』~ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ:ジギタリスの副作用の疑い
●『ニジンスキー(1979)』~ニジンスキー:統合失調症
『ビューティフル・マインド(2001)』~(天才数学者にしてノーベル経済学賞受賞者)ジョン・ナッシュ:統合失調症
●『シャイン(1995)』~デイヴィッド・ヘルフゴッド:統合失調症

(天才を奪った病)
●『エゴン・シーレ(1980)』~エゴン・シーレ:インフルエンザ(スペイン風邪)
●『打撃王(1942)』~(鉄人)ルー・ゲーリック:筋萎縮性側索硬化症
●『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ(1998)』~ジャクリーヌ・デュ・プレ:多発性硬化症


(歴史と病気)
●『ヒトラー~最後の12日間~(2004)』~ヒットラー:パーキンソン病


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# by harufe | 2005-06-27 10:49 | カテゴライズ

マイライフ My life(1993/US)

C64 腎盂を除く腎の悪性新生物

【staffs】ブルース・ジョエル・ルービン監督
マイケル・キートン(Bob James)、ニコール・キッドマン(Gale Jones)、ハイン・S・ニョール(Healor Ho)
【prises】(not worth mentioning)
【my appraise】★★★-(3 minus per5)
【prot】
 若くして成功し、ロスで広告代理店を経営しているボブは、腎臓がんが全身転移し、余命数ヶ月と主治医に告げられている。そして、彼は、愛する美しい妻と彼女のお腹の中の子どもを残し、死を迎えざるを得ない運命を受け入れようとしている。
そのボブは、妻にすすめられ嫌々訪れた東洋医で、不思議な体験をし、彼の中にある「怒り」を指摘される。彼の心の旅は、自分の幼少時へと向かう…。
【impression】
 俳優の力で、どうにでもなるプロット。
 マイケル・キートンも悪くないが、もう少しなんとかしようがある気もする。ニコール・キッドマンは、美しし、上手いが、映画に力を与えるまでにはなっていない。
 「バッドマン」で売り出したばかりのマイケル・キートンと、「遙かなる大地」「デイズオブサンダー」でトム・クルーズとの共演で注目されて売り出し中のニコール・キッドマンの共演だったが、売り出し中の力は伝わってこない。
 黒澤明「生きる」よりは、内面を描こうとして、「生きる」よりも、内面を描けていない作品。結局、家庭や家族への期待や希望を無くした方が、より真実に迫られるということか。

【medical view】
 以前、ある介護関連のセミナー(参加者は高齢者の介護職がほとんど)で、講演者が、「みなさん死ぬとしたら、①がん、②ぼけ、③寝たきりのうち、どれが良いですか」と聞いたところ、①と②で半々で、③の方は誰もいませんでした。ちなみに、私も①か②で、どちらかといえば②です。とはいえ、この結果、実は、私には結構ショックでした。一般には、がんやぼけは相当恐れられているような認識があって、③の人が圧倒的に多いと思っていたからです。この結果は、回答者が専門職だからなのか、それとも一般の方の認識もそうなのかは分かりませんが。
 私が①や②が良いと思うのは、②の方は「何も分からなくなればかえって幸せ」という考え方ですし、①の方は死ぬまでの準備ができるからという考え方です。①については、千葉敦子さんの著書から相当影響を受けています(千葉敦子さんは、1980年代に、乳がんであることを宣言して、その闘病を自らレポートしたジャーナリスト。いまでは、がん宣言もめずらしくないですが、千葉さんが嚆矢といって良いでしょう。)。

 一般には、死を迎える上での精神的なプロセスとして、故キューブラロス(スイス出身の方で、フランス風に「クベールロス」と呼ぶのが粋。「ライフオブデビットゲイル」でもフランス語読みしていましたね。)の「否認と隔離」→「怒り」→「取引」→「抑うつ」→「受容」の5段階は余りに有名です。この段階通り進むのか、とか、この段階全て経過するのか、とか、色々な意見はあります。また、ロス自身が死を迎えた際に、往生際が悪かったらしく、その評価を下げている面はあるようです。ただ、死を迎える人の精神世界を理解するキーワードとしては、今なお有効と思います。
 この映画では、死を受容し、平静に死に向けた準備をするかにみえる主人公が描かれています。しかし、実際には、彼の内面では死を受容できておらず、それが、彼が幼少期からの怒りを自分の中に抑え込んできたことが明らかにされていきます。それを明らかにする手助けをするのが、東洋のヒーラーということで、まあ、「ありがち」な設定ではあります。

 ボブのがんは、原発の腎臓がんという以外の情報は映画から得られませんが、おそらく腎細胞がんでしょう。腎細胞がんは、遺伝・遺伝子の関与が大きいと考えられており、腎細胞がん多発家系が知られています。遺伝子解析も進んでおり、家系内発生を予測できるレベルにはなっています。遺伝子診断、遺伝子治療に最も近いところにあるがんの1つということでしょうか。ただ、たばこや脂肪摂取量や長期透析が危険因子となっており、少なくとも遺伝だけで説明できるがんではありません。
 エコーで比較的みつけやすいがんですし(1cm未満でも8割見つけられるそうです)、最大径5cmくらいで転移がなければ外科治療成績が良いようですから、人間ドックでエコーをやるのは重要ですね。
【tilte, subtilte】
 英語のタイトルも素直なら、邦題もそのまま。少なくとも、日本語で「マイライフ」となると、陳腐すぎて、損している気がする(クリントンをどうしても思い出してしまう)。しかし、だかといって、副題をつけるのも何だし、「遺された愛」なんてタイトルつけられてもいやだし、難しいものですね。

【books】
 近藤裕さんが「心を癒すシネマセラピー 映画が教えてくれる生き方のヒント」の中で1章をもうけて、この映画を解説しておられます。
【videos, DVDsの入手しやすさ】★
 残念ながらレンタルはビデオのみ。セルはありません。ビデオを置いているショップも多くないようです。

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# by harufe | 2005-06-26 11:34 | ICD C00-D48新生物

ダンサーインザダーク Dancer in the dark(2000/DNM)

H54.2 両眼の低視力
H33 網膜剥離の疑い

【staffs】監督:ラース・フォン・トリアー
ビョーク(Selma)、 カトリーヌ・ドヌーヴ(Kathy)、デイヴィッド・モース(Bill)
【prises】
第53回カンヌ国際映画祭パルム・ドール(最優秀作品賞)受賞、最優秀女優賞(ビョーク)受賞
ゴールデングローブ賞ドラマ部門主演女優賞(ビョーク)ノミネート、オリジナルソング賞(ビョーク)ノミネート
第73回アカデミー賞オリジナル主題歌ノミネート
【my appraise】★★★★(per5)
【prot】
 1960年代アメリカ。チェコから移住し、遺伝性の病気で視力をほとんど失っているテルマ。エルマは視力が更に失われていることを隠しつつ工場勤務を続け、その収入と内職のわずかな稼ぎの中から、息子には内緒で、彼の目の手術費を蓄えている。
 余裕のない生活の中、テルマには、息子と、大好きなミュージカル映画と、彼女を支えてくれる暖かい友人や隣人がいた。しかし、彼女がその隣人に秘密を漏らしたことが、裏切りと悲劇を呼ぶ…。
【impression】

 ビョークの熱演と、技工をこらした撮影が光る異色作品。幻想シーンになるとミュージカル、しかもビョーク独特の苛性的な歌声とくる。
 当時アメリカに一度も行ったことが無いというのに、想像の60年代アメリカを舞台として(ロケはデンマーク)、撮ったという、ラース・フォン・トリアーらしい逸話が残っている。アンチ・ハリウッドの遊び心なのだろうか。
 いずれにしても、一筋縄ではいかない監督と主演女優の個性のぶつかり合いが、それなりに面白い話にまとまっているのだから不思議。救いようのない暗い話ではあるが、生きた人間の息吹が聞こえる作品。好き嫌いが結構別れる作品でもある。
 アイスランドの歌姫ビョークにとって、2000年は、アイスキューブの独立3枚目のアルバム「ホモジェニック」からのラスト・シングル「オール・イズ・フル・オブ・ラヴ」でグラミー賞"Best Short Form Music Video"を獲得した上に、パルムドール・カンヌ最優秀女優賞と、メジャーの脚光を浴びまくった年であった。

【medical view】
 テルマ母子を襲う「遺伝性で失明する病気」が何なのかが気になるところです。ところが、どうも、これも、ラース・フォン・トリアーの創作らしいのです。したがって、この病気が何なのかを想像しても余り意味がないのですが、考えられるのは、遺伝性かつ後天的な失明ということで、強度な近視によって起きる網膜剥離くらいしかないと思います。つまり、網膜剥離が遺伝したというより、強度な近視が遺伝で、それによって網膜剥離が起きるということ。
 網膜剥離は、ボクシングの辰吉選手で有名になりましたが(やや古い)、現在わが国で増加中です(目の酷使や高齢化などが原因らしい)。この病気、1920年にスイスのゴナンが原因と治療法を発見しました。当時は赤く焼けたコテを白目に直接当てるという恐ろしいものでしたが、これで治癒率が5割を超え、治せる病気になりました。1961年にレーザー適用がアメリカで試みられていますし、この映画の舞台となった1960年代には、様々な治療法が登場しかなり治せる病気になっていたようです。映画の中で200ドル余り(現在の300~400万円?)を使って受けた手術はこのレーザー治療と考えることもできましょう(もちろん、ラース・フォン・トリアーはそんな設定はしていないでしょうし、当時のアメリカでレーザー治療がこの値段で済まないような気がします)。
 なお、現在では、強度の近視による網膜剥離は、かなり高い確率で治癒しますし、予防もできるそうです。
 日本では、眼科が、「楽な割に儲かる」診療科の筆頭に上げられることが多かったように思います。子育てが女性に押しつけられがちな困った国ニッポンでは、女子医学生に人気があるのも眼科医です。それに、命に関わる病気が少ないというのが、気楽さを増しているように思います。このこともあるのか、眼科医という、つげ義春の「ねじ式」を思い浮かべるのは私だけではありますまい。以前は、コンタクトでボロ儲けができ、白内障の人工水晶体が保険適用になり(1990)と、開業すれば儲かってしょうがない商売でしたが、最近では、眼科の経営も厳しいようです。

【books】
脚本が出版されていましたが、絶版です。
【videos, DVDs入手しやすさ】★★★★★
相当な話題作でしたから、レンタルDVDがどのショップにもあると思います。

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# by harufe | 2005-06-24 23:45 | ICD H00-H59眼および付属疾患

アルジャーノンに花束を :Chary(1968/US)

E70.0 古典的フェニルケトン尿症

【staffs】ラルフ・ネルソン監督
クリフ・ロバートソン(Charly Gordon)、クレア・ブルーム(Alice Kinian)、レオン・ジャニー(Dr. Richard Nemur)、リリア・スカラ(Dr. Anna Straus)
【prises】アカデミー主演男優賞(クリフ・ロバートソン)
【my appraise】★★★(3per5)
【prot】
 子どもと同じ知的水準にしかない青年チャーリー。彼は、パン屋の雑用で収入を得ながら、外国人向けの夜学に通い文字を学んでいる。夜学の教師アリスは美しい未婚の女性、彼女は知的障害に関する論文を執筆中の大学院生でもある。アリスの強い推薦で、チャーリーは、白ネズミのアルジャーノンに対してしか試みられていない手術を受ける。手術は成功し、チャーリーの知能は瞬く間に高まるが…。
【impression】
 日本では、原作の小説の方が有名で、映画化されたことは余り知られていませんよね(テレビドラマ化されて、ユースケ某が、チャーリーを演じたそうですが、そういったものを見るほど、悪趣味ではないので、ここでは伏せておきます)。 この映画、原作と違って、チャーリーがアリス(クレア・ブルーム:右写真)のお尻や胸を目で追ったり、レイプしかけたりと、結構アダルトな内容となっています。
 この映画の最大の欠点は、チャーリー役のクリフ・ロバートソンが、知的障碍を演じるのが、あまり上手と思えないというところです。ちょっと思いつくだけでも、ここ10~20年名優と言われる俳優は、知的障碍を積極的に演じています(受賞は全てオスカー)
◎レオナルド・ディカプリオ(ギルバート・グレープ:助演男優ノミネート)
◎ショーン・ペン(アイアムサム:主演男優ノミネート)
◎トム・ハンクス(フォレスト・ガンプ/一期一会:主演男優賞受賞)
◎ケヴィン・ベーコン(ウィズ・ユー)
◎ジュリエット・ルイス(カーラの結婚宣言)
◎キューバ・グッディング Jr(僕はラジオ)
◎ビリー・ボブ・ソートトン(スリング・ブレイド→知的障碍というより、特異的発達障害?)
◎ダスティン・ホフマン(レイン・マン→間口を自閉症まで広げると:主演男優受賞)
 これらとと比較すると、クリフ・ロバートソンの演技のレベルは相当低いように思います。だけど、これで、クリフ・ロバートソンはオスカーもらっているようなので、当時の演技レベルだと、この程度で評価されたということなのでしょうか。
 また、専門機関が考証を手伝っているようですが、俳優さんが、現在の科学の知識からすると、随分変なことを言ったりしています。これはやむをえないのでしょうね。 「知的障害を脳手術によって治療する」という発想そのものが、今じゃ考えにくいですし(この頃のアメリカは特に外科手術信仰が強かったのでしょう)。
 それに、70年前後に流行ったような凝りすぎの映像がかえってしらけるなど、全般に、原作の域には達していないように思います。

【medical view】
 原作では、チャーリーの知的障害の原因は、フェニルケトン尿症となっています(映画の方では触れられていません)。 フェニルケトン尿症は、常染色体劣性遺伝病の代謝異常で、日本では8~10万人に1名くらいの発症率だそうです(ちなみに、欧米では1万人1人、中国では1万5千人に1人のようです)。 遺伝子の欠損によって、必要な酵素(アミノ酸の1つフェニルアラニンをチロシンという別のアミノ酸に変える酵素)が作られず、血中に有害な物質(フェニルアラニン)が蓄積され、それが中枢神経の発育を阻害し知能障碍を引き起こしたり、 赤毛、色白などのメラニン色素欠乏を引き起こすという病気です。逆にいえば、神経が十分に育つまでの期間、フェニルアラニンが含まれた食品(タンパク質を含む食品にはだいたい含まれます)をとらなければ良いことになります。 ということで、少なくとも先進国では、早期発見によって、完全に対処されています。 日本でも、1977年以来、生まれて数日のうちに検査して(このとき類似の疾患を合計5種類検査します)います。 しかし、フェニルケトン尿症の子どもは、一般の食事は制限され、しかもフェニルアラニンの含まれない不味いミルクを補助的に飲むという生活を続けるわけで、結構大変なことと思えます。 給食とかも食べられず、弁当を持参しなくてはならないということで、大変ですねえ。 まあ、食事以外は、全く普通の生活を送れるわけですから、そう悲観することではないのかもしれませんが、ご家族やご本人のご苦労はいかばかりでしょうか。

 フェニルケトン尿症は、遺伝病の中でもメンデル遺伝するもので、父親・母親、両方がこの遺伝子を持つ場合にのみ、子どもに症状が現れます(常染色体劣性遺伝)。父親と母親は、フェニルケトン尿症をもたらす遺伝子の変異を持ちながら、なんら特別な症状はもっておらず、フェニルケトン尿症の子どもが産まれて初めて自分がその遺伝子を持っていることに気がつくというわけです。8~10万人に1人がこの病気に発症するということは、300人に1人はこの遺伝子を持つ人がいるということになります。もっとも、こういうタイプの遺伝病(常染色体劣性遺伝病)は1,500種類あり、どんな人でも少なく見積もって3つ程度の遺伝子変異を持つという計算になるのだそうです。つまり、誰もが少なからず遺伝的な負因を持っているとことですね。「ロレンツォのオイル」のところで述べたことと重なりますが、「遺伝病」を忌避する精神が、小市民的利己的であるばかりでなく、いかに非科学的であるかということが分かります(自己中心的で頭が悪いということですね)。もっとも、近親結婚・出産はやめた方が良いというのは、間違いないですね。
 フェニルケトン尿症の遺伝子は、1986年に初めて見つかりましたが、その後、350種類の異なる遺伝子が見つかっています。要するに1つの病気でありながら、その原因は350通りある(そのどれもがフェニルケトン尿症を起こす)ということになります。その中には、治療の必要がない軽症例もあったため、昔から知られているフェニルケトン尿症のことを、「古典的フェニルケトン尿症」と呼ぶのが正式になっています。当然、生後すぐにフェニルケトン尿症としてマススクリーニングされた子どもの中にも、軽症例や一過性の症状を持つ方が含まれていたことになり、見直しが必要になってきているところです。

 フェニルケトン尿症は、昔から知られている遺伝病でした。それが早期発見・対応により、障碍を持つことなく生活が送れるということで、戦後の医学・公衆衛生学への大きな成果であり、人類の期待・希望の手掛かりでもありました。しかし、現在では、病気の多くはそう単純ではないということが分かってきており、フェニルケトン尿症の見方自体も仕切治しがなされているということです。

 いずれにせよ、チャーリーのような人は今や生まれなくなっています。 これもまた、大きな科学の勝利です。 そいうことで、原作が書かれた時代は、チャーリーの脳手術はSFといえたが、今やSFとしても成立しないということです。
【tilte, subtilte】
 原題は、主人公の名前「CHARLY」(ただし「R」は左右非対称の文字→主人公が知的障害でRを左右非対称に書いてしまうことを表したもの)。 公開時の邦題は「まごころを君に」(すごいタイトル…)。 その後、ダニエル・キースの原作が「アルジャーノンに花束を」という邦訳でヒットし、この邦訳がそのままDVDタイトルとなった。
 「アルジャーノン」は、主人公チャーリーと競う脳手術が行われたネズミ。 「まごころを君に」よりは、「アルジャーノンに花束を」の方がまともか。 「アルジャーノンに花束を」というタイトルは、あまり良いタイトルとは思わないが、原作の邦訳が出版された当時の日本(1980年代)の心理系女子の心を捉えたという意味では評価できる。

【books】
原作はロングセラーです。チャーリーの知能の変化を文体によって表現する手法は、小説ならではで、見事です。
【videos, DVDs】★★★
以前、ビデオ、LDが発売され絶版になっていましたが、最近、DVDセル・レンタルがでました。ただ、ショップには余り置いていないようで、ネットレンタルを利用するしかなさそうです。

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# by harufe | 2005-06-23 18:00 | ICD E00-E90内分泌栄養代謝疾患

酔いどれ天使(1948/JPN)

A15 呼吸器結核,細菌学的または組織学的に確認されたもの

【staffs】黒澤明監督
出演:志村喬(眞田)、三船敏郎(松永)、山本礼三郎(岡田)、中北千枝子(美代)、木暮実千代(奈々江)、久我美子(セーラー服の少女)、笠置シヅ子(ホール歌手)
【prises】(not worth mentioning)
【my appraise】★★★(3er5)
【prot】
 眞田は闇市の近くで開業する貧乏医者。昼間から酒をあおり、口も悪いが、シャイな性格で正義感も強い。
 ある日ヤミ市の顔役松永がピストルの創の手当を受けにやってくる。眞田は、松永の結核を疑い、治療を受けることをすすめるが、松永は全く取り合わない。強がりを言い酒と女の日々の松永だが、兄貴分の岡田が出所してくると、羽振りも落ち目になる。それに合わせるように、身体も徐々に病魔に蝕まれてくる。松永の中の汚れていない部分に共感を示す眞田は、うるさく安静を迫る…。
【impression】
 黒澤初期の傑作。宝石の原石のような作品。見て損はない。しかし、俳優のセリフが明瞭に聞こえない。全体に緊張感とテンポを与えるためなのか、滑舌が悪いのか?それとも、当時と現在と余りにしゃべる言葉が違ってきていて、聞き取れないのか?字幕をつけてほしいくらい。
 この映画で黒澤監督は初めて三船敏郎を起用し、彼に惚れ抜いて、脚本も彼の凄みが発揮できるように変更したらしい。

【medical view】
 それにしても、この時期、高価にしても、闇市場にはストレプトマイシンが相当入ってきており、松永であれば、容易に入手できたはず(ちなみに、スーパーダイエーの原点「友愛薬局」は、闇ルートの抗生物質で相当儲けた…「第三の男」みたいな話ですが…)。結核の特効薬である抗生物質を使おうという話が出てこないのは、「静かなる決闘」と同様、不可思議な設定。
 おそらくは、黒澤独特のヒューマニズムを描くために、リアリティや設定を犠牲にする手法と思われる。これは、「静かなる決闘」で、すでに梅毒が治療が容易な病気になっていたというのに、治癒困難な前提で創られたのに似ている。
 この当たりは、リアリズムと設定に厳密にしつつ、描きたいことを描くためにはリアリティを歪めるという、黒澤らしいといえば黒澤らしい手法。これが凡庸な監督に受け継がれると、予算のために設定やリアリティを犠牲にする、という日本映画の悪しき伝統となってしまっている。

 それにしても、最後に「理性があれば病気なんて怖いことはない」と、セーラー服の久我美子に言わせる説教臭さは好きになれない。理性があって安静にしていたって、抗生物質がないところでは、結核は治るってのは無理があります。
 ただ、結核の死亡率は、抗生物質が一般に使用される以前から急速に落ちています。これは栄養状態の改善といった公衆衛生上の改善によるものと考えられ、一人の患者の治療に勝るとも劣らない公衆衛生の意義として、よく語られます。
【tilte, subtilte】

【books】
【videos, DVDs入手しやすさ】★★★★
 レンタルDVDが比較的最近リリースされましたが、置いていないショップも多いです。以前からあるレンタルビデオはどこでも置いてあるでしょう。

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# by harufe | 2005-06-22 11:52 | ICD A00-B99感染症及び寄生虫症

ある愛の詩: A love story(1970/US)

C95.1 細胞型不明の慢性白血病

【staffs】監督 :アーサー・ヒラー、脚本: エリック・シーガル、音楽:フランシス・レイ
出演: アリ・マッグロー(Jenny)、ライアン・オニール(Oliver)、レイ・ミランド(Oliver's Father)、John Marley ジョン・マーレイ(Jenny's Father)
【prises】
第43回アカデミー賞主演男優賞(ライアン・オニール)ノミネート、主演女優賞(アリ・マッグロー)ノミネート、助演男優賞(ジョン・マーレー)ノミネート、オリジナル脚本賞()ノミネート、作曲賞()受賞、
【my appraise】★★(2er5)
【prot】
 大富豪の家に生まれながら父親と葛藤する法学生のオリバー。イタリア系移民の家庭で父親に大切に育てられ、バロック音楽と父親を愛す女子大生のジェニー。境遇の異なる二人が惹かれ合い、オリバーの父の反対を押し切って結婚する。
 オリバーは法科大学院卒後弁護士として嘱望され、二人には輝かしい未来が開けてきていた。しかし、ジェニーは突然の白血病の病魔に襲われる…。
【impression】
 原作の小説も、そして映画の興行成績も歴史を塗り替える大ヒットだったいうことですから、時代と共に風化するとは、こういうことなのか…というのが正直な感想です。
 この映画が公開された1970年は、ニューシネマ全盛で、純愛に対する一種の不信感があった時代。しかし、大衆は純愛に飢えていた…なんていう見方があるようです(「70年代アメリカン・シネマ103 もっともエキサイティングだった13年」フィルムアート社)が、私としては、「俺たちに明日はない」はもちろん、「ファイブ・イージー・ピーセズ」だって、純愛映画だし、もっと言えば、ヌーベルバーグの「勝手にしやがれ」や「突然炎のごとく」なんて大純愛映画だと思うので、こうした見方には反対です。
 単に、こういうシンプルなストーリーっていうのは、忘れた頃にやってくるということなんではないでしょうか。
 それにしても、この映画の続編があり、オリバーが新しい恋を見つけるというのは、いかがなもんでしょうか(見てないのですけど)。
【staffs】
 この映画は、主演のアリ・マッグローが自分の大学時代の友人のエリック・シーガルの脚本を売り込んだことがきっかけになっているようです。アリ・マッグローは、73年スティーブマックイーンと結婚し、その後、離婚したようです。いかにも70年代を象徴するような女性ですね。
 レイ・ミランドがかつらなしで登場しています。頑張っているのに、助演男優賞にノミネートされたのは、ジョン・マーレーの方でした。

【medical view】
 白血病という病気は、他のがんに比較して若年層が罹患しやすく、しかも、以前は全く治療法が無かったため、悲劇の病気として、映画や小説の題材となってきました(「ラストコンサート」「ジョーイ」「ラブ・ストーリーを君に」「オータム・ストーリー」など)。
 最近では、化学療法や骨髄移植などの効果的な治療法が実施されています。特に化学療法による画期的な進歩は、がん治療の歴史にとって特筆できるものと思われます(この点については、日本白血病基金のHPを参照下さい
しかし、治療によって白血病が完全に克服されたわけではありません。また、化学療法が強い苦痛を伴うことから、「愛の選択」「ママ、泣かないで」といった映画が創られていますし、移植を巡る複雑な関係から、ヒューマンドラマ(「マイルーム」)、サスペンス(「絶体×絶命」)やミステリー(「半落ち」)や法定映画(「レイン・メーカー」)などが、今なお、次々と生まれています。
 これほど映画や小説のテーマになる病気は他にはありません。一時期、エイズに関する映画・小説が増加しましたが、今は下火です。患者さんや家族の方には、有り難いこととはいえないと思いますが。
【tilte, subtilte】
 素直なタイトル。素直な邦題。

【books】
【videos, DVDs入手しやすさ】★★★
 レンタルDVDが最近リリースされましたが、置いてあるショップは少ないようです。

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# by harufe | 2005-06-21 10:44 | ICD C00-D48新生物

誤診 :... First Do No Harm(1997/US)

G40.3 全身性特発性てんかんおよびてんかん(性)症候群
G41.0 大発作性てんかん重積(状態)


【staffs】監督: ジム・エイブラハムズ
出演: メリル・ストリープ(Lori Reimuller)、フレッド・ウォード(Dave Reimuller)、セス・アドキンス(Robbie Reimuller)、アリソン・ジャニー(Dr.Melanie Abbasac)
【prises】
1997年エミー賞ミニシリーズ・特別番組主演女優賞(メリル・ストリープ)ノミネート、1998年ゴールデングローブ賞TV映画主演女優賞(メリル・ストリープ)ノミネート、1998年ヤングアーティスト賞最優秀ファミリーTV賞受賞、最優秀10歳以下最優秀男優賞(セス・アドキンス)受賞
【my appraise】★★★+(3plus per5)
【prot】
 三人の子どもに恵まれ幸せに暮らす一家。ある日幼い末っ子ロビーが発作を起こし、保育園を早退する。それはてんかんの重複発作の始まりだった。
 ロビーのてんかんは難治性で、あらゆる薬を試みられるが、効果なく、逆に薬の副作用でますます衰えていく。医師は、外科的手術を進めるが、医師の治療に疑問を持つ母親は、自ら図書館で治療法を勉強始める…。
 実話に基づいて作られた作品。
【impression】
 なんといっても、メリル・ストリープの演技が光ります。また、それを超えるのが、ロビー役のセス・アドキンスの演技です。
 ただ、この二人の演技が余りにも真に迫っているので、逆に、下に述べるミスリーディングが心配になります。

【medical view】
 医学的な考証はきちんとしていると思いますが、ミスリーディングな内容です。
 この映画を見た多くの人は、「やっぱり病院って怖いなあ」と思うし、「医者を信じて治療を受けるのは止めた方が良いな…」と思うのではないでしょうか。また、ケトン食療法が、てんかん治療の切り札のように感じる人がいるかもしれませんし、外科的治療に対する嫌悪を感じる人がいるかもしれません。
 確かに、ケトン食療法は、乳幼児の難治性てんかんにとって、選択しうる1つの有効な治療法であるようです。しかし、副作用というか危険性も高く、一部の人に限られた効果しかあげられていません。むしろ、外科的療法の方が有効な人も多くいます。

  ただ、ケトン食療法が、なぜ難治性のてんかんに効果を示す場合があるのかが、いまだ、科学的には不明なのです。 ケトン食療法は、断食により、てんかん発作がなくなる/弱まる場合があるという事実から、19世紀に始まっていたのだそうです。 断食期間は、血糖が尽き、体内の脂肪をどんどん燃やし始めます。そのために、体内にケトンが代謝される(脂肪の種類にもよるが)。 であれば、低炭水化物食、高脂肪食によって、同様な効果があるのではないか…という思いつきから始まったのだと思います。 ただ、そもそも、なんでケトンが、脳の異常発火(てんかん発作)を抑制する効果があるのは、今にいたっても謎なのです(仮説すらない)。

 それから、映画でも散々出てきたように、「二重盲検法」でもその効果が確認されていないのです。ですから、例えば、クリニカル・エビデンスISSUE9 (代表的な疾患の治療法について、最新の科学的な証明をしめしたドキュメント。イギリスで発行され、イギリスでは医師、医学生及び一般市民が、日常的に用い、米国では50万人の医師、イタリアでは30万人の医師に対して、公的機関が配布している。) にも、ケトン食療法は掲載されていません。このように、ケトン食療法は、「非科学的な代替療法」と言い切ってそう問題はないと思います。

 「科学的な理屈付けがしっかりしているか」というのを「妥当性」、「統計的に裏付けられたきちんとしが比較を行って、ちゃんと効くことが証明されているか」というのを「信頼性」という言葉で表せば、 ケトン食療法には、妥当性も、信頼性もない治療法ということになります。 ロビーの両親の友人の医師が、主治医に対して、「複数剤併用も開頭術も二重盲検法で確認されていないじゃないか」と反論され、主治医が黙っちゃいますが、 複数剤併用も開頭術も、「信頼性はないが、妥当性はある」ということで、大きく異なります (なんで、それを反論しないか不思議だったが)。

 さらに、TVMだと、ケトン食療法は、誰にでも効果がある魔法の治療法のように描かれていますが、実際には、効果があるのは半数程度(厳密に科学的ではないのですが)、 ですし、また極端な食生活のため継続できない人も一定割合いるようです。 それに、ケトン食療法は、「no harm」という点では、開頭術に比較すれば優れていますが、結構危険性があります。このように、科学的思考をとる医師であれば、 積極的には推薦したくない治療法であることは、理解できます。 ロビーの場合は、結果的に、ハッピーだったわけですが、主治医が心配していたように、逆効果となった可能性も否定できません(当然、ケトン食療法が全く効果が無く、外科的治療が著効がある子どももいます)。

 この映画から得られる教訓は、「病院は怖いところ」ということでもなく、「外科治療は恐ろしい」ということでもなく、「食餌療法が信頼できる」ということでもありません。医療側がいかに正しいという「科学的な確信」を持っていたとしても、患者や家族が、自ら治療法を選択するということに、医療がどう折り合いをつけていくのか、ということだと思います。
 この当たりは、「ロレンツォのオイル」のところで参照した、李氏の言及をご参考下さい。
 ケトン食療法については、下のページを参照下さい。
日本てんかん協会の説明ページ
長崎てんかんグループの説明ページ

 この映画でも、フレッド・ウォード演じる父親の保険のせいで、最初に入院した病院を退院して、郡立病院に転院せざるをえないといった、アメリカ独特の制度上の問題が出てきます。
 【tilte, subtilte】
 原題"…first do no harm"は、「(患者を)何よりも傷つけてはならない」「治療に副作用はつきものだからといっても、治療がかえって害を与えることにならないかを慎重になるべきである」という意味です。 この言葉は、一般に、『ヒポクラテスの誓い』のフレーズとされ、医療従事者(特に医師)であれば誰もが知るフレーズです (『ヒポクラテスの誓い』は、医学の父と呼ばれるヒポクラテスが、医師の基本的な理念を語ったものです)。 TVMの中でも、冒頭、医学生の卒業式で登場しています。 しかし、実は、"…first do no harm"というフレーズは『ヒポクラテスの誓い』の中にはありません。 "I consider for the benefit of my patient and abstain from whatever is harmful or mischievous."という大変類似したフレーズはあるのですが…。 なぜこんなことになっているのか、とても不思議だったのですが、海外でも同じ事情で、それについて、言及しているサイトを見つけましたのでご参照下さい。
 しかし、それにしても、邦題「誤診」はひどい。 この作品の内容には全く一致しないタイトルです。 というのも、出てくる医師は、誤診はしていませんし、もちろん「医療過誤」「医療ミス」も起こしておらず、あえていえば「医療被害」ということになるでしょうか。 映画を見ていただければ、分かりますが、この当たりをごっちゃにされると、制作者たちが描きたかったことがずたずたにされてしまいます。
 それから、字幕についてですが、「ケトン食餌療法」とは普通言わないと思います(「ケトン食療法」が正しい)。 また、テグレトール、デパケンといった薬品名を、テガトール、デパキーンとするなどの細かい誤りがあります(日本で通用している呼称と英語読みとは違う)。 こういう作品を扱うのであれば、きちんと考証を受けるべきです。 。

【books】 
【videos, DVDs入手しやすさ】★★★
 レンタル&セルDVDがリリースされています。昔のレンタルビデオもありますが、DVD、ビデオ共に置いてあるレンタル・ショップは余り多くないです。

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# by harufe | 2005-06-20 12:51 | ICD G00-G99神経系の疾患

ジョンQ 最後の決断 : John Q(2002/米)

I42.0 拡張型心筋症
【copy】
その時、彼は病院を占拠した。

要求はただ一つ、「息子の命を救うこと」

【staffs】監督 :ニック・カサヴェテス
出演 :デンゼル・ワシントン(John Q. Archibald)、ロバート・デュヴァル(Frank Grimes)、ジェームズ・ウッズ(Dr. Raymond Turner)、アン・ヘッチ(Rebecca Payne)、レイ・リオッタ(Monroe)
【prises】(not worth mentioning)
【my appraise】★★★(3 plus per5)
【prot】
 父親ジョンQを中心に親子三人平和に暮らす一家。しかし、ある日突然、息子マイクが倒れた。診察した心臓外科医と病院の院長は、心臓移植の選択を示すが、父親ジョンQの加入する保険では対象にならないという。会社側が最近HMOに切り替えたためらしい。莫大な手術費用を工面するため奔走するジョンQ。しかし、会社側への抗議が受け入れられる途が開けた矢先、病院側は退院を迫る。どうしようもない怒りをジョンQにぶつける妻。ジョンQは、遂に決断する。病院を乗っ取り、息子に手術を受けさせるのだ…。
 アメリカ医療制度の矛盾への強い怒りを投げかけた作品。
【impression】
 アメリカの社会や医療制度のことを頭だけで分かっていても、ピンとこないところが多く、作品そのものに感情移入しにくいかもしれない。
 主演予定のダスティン・ホフマンが降りてお蔵入りしていた映画(ダスティンは、「マスメディア」にスポットをあてたかったらしい)が、ニック・カサヴェテス監督のアメリカ医療制度への怒りによって蘇った。監督自身、娘が重い心臓病を持ち、死にかけている我が子が満足のいく医療を受けられないという問題をつきつけられた経験があるそうだ。
【medical view】
 親が子を思う気持ち、不平等な社会制度に対する怒り…どちらも十分伝わってきたが、私には、どうも違和感が残った。
 心臓移植がHMOの対象外であることへの怒りで始まっている(発見が遅れたことまでがHMOのせいになっているとは、アメリカ人はHMOに相当恨みがある様子(『恋愛小説家』でもやり玉にあがっていた))。一方、日本など皆保険とはいえ、心臓移植はすべからく保険適用ではない。高度先進医療の適用ではあるが、やれるのは国循と阪大のみだし、それ以前に、日本ではドナーが見つからず、お金を作ってアメリカで心臓移植を受けるしかない。ジョンQは、「気軽に」移植してもらおうと考えられる分、恵まれているといえるかもしれない。ただ、日本では、心臓移植の高度先進医療部分が保険外とはいえ、数百万円程度でおさまり、アメリカとは1桁安い。
 結局、お金があれば高い水準の医療が受けられるアメリカと、お金があろうが無かろうが、一定程度の医療しか受けられない日本、どっちが良いかと言うことになると思います。
 私は個人的に、日本の方が好きですし、日本の制度の方が、国民の不満が少ないということはいえると思います。ただ、日本の制度には問題があると言う意見も説得力があると思います。

 更に、この映画は子どもが元気になってハッピーエンドで終えているが、心臓移植の3年予後が7~80%で、10年生きれば良い方、しかも免疫抑制剤を一生飲む生活、本当に大変なのはこれから。本当に残念だし、かわいそうであるが、やはり、「神の与えた試練」と考えるしかないような気がする。だからといって、ジョンQのやったことや心情を否定する気持ちにもなれないのだけど…。
 監督は、俳優や監督の組合が加入する保険会社のランクでは、満足のいく医者すら選べなかったと怒りを隠さない。確かに、日本では、どんな人でも、好きな病院は選べる。しかし、日本では、技術の高い医師を選ぶ以前に、誰の技術が優れているかという情報そのものがない。日本でもデータを集め公開して選択と競争を働かせようという議論がある。まっとうな意見である。しかし、そうなると、当然、選べる人と選べない人が生じ、選べない人の「怒り」という新たな問題が太平洋を渡ってやってくる。
 …などど、映画そのものとは全く関係のないところで、考えさせられました。しかし、監督も医療制度の問題をメインに据えているし、実際、アメリカ国内で医療制度の論争材料になったらしいので、私の見方もあながち、間違ってはいないようだ。

【books】
 ノベライズが出ています。
【videos, DVDs 入手しやすさ】★★★★★
 ビデオ・DVDともレンタルがリリースされています。どのショップにもほぼ必ずあります。

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# by harufe | 2005-06-19 08:00 | ICD I00-I99循環器系の疾患