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酔いどれ天使(1948/JPN)

A15 呼吸器結核,細菌学的または組織学的に確認されたもの

【staffs】黒澤明監督
出演:志村喬(眞田)、三船敏郎(松永)、山本礼三郎(岡田)、中北千枝子(美代)、木暮実千代(奈々江)、久我美子(セーラー服の少女)、笠置シヅ子(ホール歌手)
【prises】(not worth mentioning)
【my appraise】★★★(3er5)
【prot】
 眞田は闇市の近くで開業する貧乏医者。昼間から酒をあおり、口も悪いが、シャイな性格で正義感も強い。
 ある日ヤミ市の顔役松永がピストルの創の手当を受けにやってくる。眞田は、松永の結核を疑い、治療を受けることをすすめるが、松永は全く取り合わない。強がりを言い酒と女の日々の松永だが、兄貴分の岡田が出所してくると、羽振りも落ち目になる。それに合わせるように、身体も徐々に病魔に蝕まれてくる。松永の中の汚れていない部分に共感を示す眞田は、うるさく安静を迫る…。
【impression】
 黒澤初期の傑作。宝石の原石のような作品。見て損はない。しかし、俳優のセリフが明瞭に聞こえない。全体に緊張感とテンポを与えるためなのか、滑舌が悪いのか?それとも、当時と現在と余りにしゃべる言葉が違ってきていて、聞き取れないのか?字幕をつけてほしいくらい。
 この映画で黒澤監督は初めて三船敏郎を起用し、彼に惚れ抜いて、脚本も彼の凄みが発揮できるように変更したらしい。

【medical view】
 それにしても、この時期、高価にしても、闇市場にはストレプトマイシンが相当入ってきており、松永であれば、容易に入手できたはず(ちなみに、スーパーダイエーの原点「友愛薬局」は、闇ルートの抗生物質で相当儲けた…「第三の男」みたいな話ですが…)。結核の特効薬である抗生物質を使おうという話が出てこないのは、「静かなる決闘」と同様、不可思議な設定。
 おそらくは、黒澤独特のヒューマニズムを描くために、リアリティや設定を犠牲にする手法と思われる。これは、「静かなる決闘」で、すでに梅毒が治療が容易な病気になっていたというのに、治癒困難な前提で創られたのに似ている。
 この当たりは、リアリズムと設定に厳密にしつつ、描きたいことを描くためにはリアリティを歪めるという、黒澤らしいといえば黒澤らしい手法。これが凡庸な監督に受け継がれると、予算のために設定やリアリティを犠牲にする、という日本映画の悪しき伝統となってしまっている。

 それにしても、最後に「理性があれば病気なんて怖いことはない」と、セーラー服の久我美子に言わせる説教臭さは好きになれない。理性があって安静にしていたって、抗生物質がないところでは、結核は治るってのは無理があります。
 ただ、結核の死亡率は、抗生物質が一般に使用される以前から急速に落ちています。これは栄養状態の改善といった公衆衛生上の改善によるものと考えられ、一人の患者の治療に勝るとも劣らない公衆衛生の意義として、よく語られます。
【tilte, subtilte】

【books】
【videos, DVDs入手しやすさ】★★★★
 レンタルDVDが比較的最近リリースされましたが、置いていないショップも多いです。以前からあるレンタルビデオはどこでも置いてあるでしょう。

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by harufe | 2005-06-22 11:52 | ICD A00-B99感染症及び寄生虫症


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